災害対策のためのデータコピー

昨日災害対策システムを構築する上で考えなければならないポイントをまとめてみた。システム、データそれぞれの重要度に応じて対策をする必要があることと、復旧に許される時間によって災害対策サイトにどのようなシステムを構築すれば良いかを記載した。

災害対策システムではどのような方法でデータをコピー、もしくは転送すれば良いのだろうか?

データコピー方法としては、下記があげられるかと思う。

  1. ストレージ筐体間コピー機
  2. データコピーソフトウェアを利用
  3. バックアップソフトウェアによる転送
  4. テープメディアの移送


ストレージ装置、特にハイエンドストレージと呼ばれる高機能なストレージは、同じストレージ装置を本番サイトと災害対策サイトの両方に設置することにより筐体間でストレージ内部の保存されたデータをコピーするという機能がある。ハイエンドストレージという高価なストレージを2箇所に導入するため非常に高価なシステムであるが、サーバではなくストレージのコントローラ部分がコピーを実現するため信頼性が高く、比較的早くデータコピーをすることができる。ストレージ装置に別途ソフトウェアのライセンスを購入しなければならないが、24時間稼動し続けなければならないシステムにとっては信頼性があるデータコピー機能として多くの実績がある。


ハイエンドストレージは高いという企業もいると思われるので、ストレージのコントローラではなくサーバのCPUでコピーを実現するのがデータコピーソフトウェアと呼ばれる専用ソフトウェアである。サーバにインストールする必要があるために若干サーバ性能に影響があると思われるが、ストレージ筐体間コピー機能に比べれば遥かに安価なソリューションとして災害対策が実現できる。データ更新分だけ送るという差分コピー機能を備えたものや2箇所での更新にも対応した双方向コピーを実現するソフトウェアなど様々なソフトウェアが販売されている。アプリケーションによってはそのアプリケーション専用オプションも用意されており、コピーの際にサービスを一切止めることなくデータコピーができるものもある。


意外に知られていない方法がバックアップソフトウェアによる転送である。バックアップソフトウェアには、バックアップソフトウェア自身をインストールしなくてもサーバ内データのバックアップが取得できるリモートエージェント、もしくはリモートオプションというライセンスが存在する。ネットワーク経由でサーバのデータをバックアップするオプションなのだが、このオプションはどのようなネットワークでも対応する。遠隔地など距離が離れているサーバでもネットワークの性能さえ許せばバックアップが取得できる。バックアップソフトウェアはすでに一般的でどのような企業でも導入されているはずであるので、その用途をバックアップだけではなく災害対策にまで広げてみることをお勧めする。バックアップソフトウェアが導入されていればそのオプション機能を追加するだけで災害対策が実現できるため非常に安価な仕組みが構築できる。

しかしながら、バックアップデータを遠隔地に保存するということは、そのデータ自身がバックアップソフトウェアによって独自の圧縮がかかっている場合が多い。同じバックアップソフトウェアによって復元する手間がこの仕組みには必要であるので、復旧に時間がかかることを覚えておきたい。


最後のテープメディアを移送する方法は、メインフレームなどが導入され始めた頃から変わらない災害対策システムである。何度も何度も繰り返すが、ハードウェア、ソフトウェアは購入できても一度失われたデータは二度と戻らない。災害対策としてデータが保存されたテープメディアを別な場所に移送し保管する方法は一番安価に実現できるソリューションである。安価ではあるが、復旧する際には一番時間がかかるのも事実。移送先からテープを戻す必要もあるし、テープ装置がなければ中に保存されたデータを読み込むこともできない。ある程度復旧に許される時間が長いシステムであれば効果的なソリューションだと思う。


災害対策といっても実際どれくらいの距離を離せばよいのだろうか?昔は東京−大阪間など比較的距離の長い災害対策をする企業が多かったようだが、最近では中距離での災害対策が多い。東京都内のサイトであれば例えば横浜、千葉、埼玉など近郊の地域、名古屋であれば静岡、三重などの地域、大阪では京都、和歌山など中距離のデータセンタでの災害対策システム構築が増えている。地震は局所的に被害が出ることがほとんどで広い地域で被害が出ることが少ないことが理由としてあげられる。また、中距離であれば通信費用の高い日本でもまだコストを抑えられることも距離が短くなっている理由である。法律でも60km以上などと定められているものもある。業界によって対策を考えたい。


「データは失われれば二度と戻ってこない」災害はいつ起こるかわからないが起こったときでは遅い。安価なソリューションや今持っているソフトウェアでも十分に構築できる。今すぐにでも重要なデータだけは守っておきたい。